研究概要 |
2003年5月から2004年1月にかけて1〜165日齢の下痢発症牛の糞便79検体について病原学的に調査した結果、52検体から志賀毒素産生性大腸菌が58株検出された。現在、それらの株の毒素産生量、血清型など性状を検索中である。 また、九州の養豚場3戸において、1997年〜2003年に30〜75日齢の子豚が計約10,000頭死亡する大腸菌性腸管毒血症の事故が発生したので、発生状況を以下のとおり報告した。発生期間は14〜19ヵ月に及び、月間の子豚死亡率は高い月で25%であった。当該農場では、発症子豚への抗生物質治療と母豚、哺乳豚および離乳初期子豚への生菌製剤の予防的投与等によって集団死亡事故は沈静化した。 これらの検体から分離された腸管毒血症性大腸菌(ETEEC)にin vivoでアンピシリン(ABPC)、ゲンタマイシン(GM)、コリスチン(CL)、ビコザマイシン(BCM)、ホスホマイシン(FOM)、スルファメトキサゾル-トリメトプリム(ST合剤)およびエンロフロキサシン(ERFX)の7抗菌薬を作用させ、殺菌力、Stx 2eの遊離および産生量を検討し、以下のとおり報告した。ETEEC菌体内に蓄積されているStx 2e量は、培養上清中の放出Stx 2e量より多く、ST合剤以外の供試薬剤は全て殺菌作用を有しており、ABPCおよびFOMでは、菌体破壊に伴う培養上清中へのStx 2e遊離量の増加が認められた。産生毒素量は、全ての抗菌薬添加区で薬剤無添加対照以下であった。以上の結果から、ABPCおよびFOMのような細胞壁合成阻害作用のある抗菌薬は、ETEEC感染豚の症状を悪化させる危険性が示唆された。一方、GM、CL、BCMおよびERFXは、大腸菌性腸管毒血症治療に有用であることが示唆された。 現在、1991年〜2003年に当研究室にて、分離されたETEEC 111株について毒素産生量、血清型、薬剤感受性などの性状を検索中である。
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