本研究は、ウシ子宮内膜組織のバイオプシーを利用した子宮の直接的な繁殖生理機能評価の確立を目的としている。平成16年度は、採取した子宮内膜組織の機能解析および生殖機能評価基準の検討として、まず、発情後、異なる時期に採取した子宮内膜組織のプロスタグランジンF_2α(以下、PG)産生能の差異について調べた。発情後1-4、8-14、16-18および19-21日に区分し、それぞれの時期に子宮内膜組織を採取した。採取後、組織を洗浄・細切し、10^<-7>Mオキシトシン(以下、OT)を含む培養液で6時間培養した。培養終了後、上清中のPG濃度を酵素免疫測定法により測定した。その結果、発情後16-18日に採取した子宮内膜組織におけるPG産生の基底値(OT無添加区)は、他の時期の基底値と比較して高かった。また、いずれの採取時期に関わらず、OTによりPG産生は増加し、特に、発情後16-18日において他の時期と比較して高い傾向を示した。次に、発情後16-18日の子宮内膜組織におけるPG産生能が、生殖機能評価の指標の一つとなりうるか否かについて調べた。空胎期間が90日未満の試験牛(対照区)および1年以上の長期不受胎牛(不妊区)を用い、発情後16-18日の子宮内膜組織におけるPG産生能を比較検討した。先の試験と同様に子宮内膜組織を採取・培養し、上清中のPG濃度を測定した。その結果、不妊区におけるPG産生の基底値およびOT刺激によるPG産生能は、それぞれ対照区と比較して高かった。以上の結果から、発情後16-18日に採取した子宮内膜のPG産生能は、長期不受胎牛においては高い群、空胎期間が短い牛においては低い群に分類可能なことから、PG産生能が子宮内膜における生殖機能評価の指標の一つとなりうる可能性が示唆された。
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