研究概要 |
前年度から引き続き,乾物生産量(W)と蒸発散量(ET)との計測値から共生窒素(N)固定量を評価する可能性と方法について検討を行い,下記の結果を得た. 1.N固定量が無(根粒非着生系統)〜少(多N条件下で生育させた植物)であったときのET_<W=0>(Wが0のときを仮定した蒸発散量ET)は地面蒸発量(E_0)にほぼ対応することが確認でき,また非N固定植物におけるET_<W=0>はE_0の計測値で代用できることが再確認された. 2.供試年度および供試系統の違いを込みにして解析した場合においても,ダイズ実験の範囲内においては,根粒着生系統のET_<W=0>とE_0の差[ET_<W=0>-E_0]はN固定量と有意な(P<0.001)比例関係を示した. 3.湿潤土壌におけるE_0,および減率蒸発過程にあるE_0(E'_0)を日射量(kWh m^<-2>)と平均飽差(hPa)および土壌水分値から推定するための基本式を作成した.ただし,潅水(降雨)後一時的に土壌表層に湿潤層が形成された場合においては実測値からの誤差が大きかったことから,予測精度の向上へ向けてさらなる改良の余地が残された.なお,ダイズ生長に伴う地表面微気象変化とE_0との関係については台風被害のため十分な成果を得るには至らなかった. 4.N固定植物におけるET_<W=0>をETから蒸散量(TR)を差し引くことにより,またTRは蒸散係数(TC)にWを乗じることによって推定することを考案し,TCの律速要因の解明を試みた.その結果,種間に見られるTC差異は大きいものの,少なくともダイズの系統間にみられる差異はさほど大きくない可能性があること,また光合成/蒸散比(ΔPn/ΔTr)は必ずしもTC変動の良い指標とはなりえないことがわかった.さらに,生育の進展およびsink/source制御に伴うTC変動の説明要因としてLWR, LAR, C/F比が有効であった.
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