研究概要 |
糸状菌の1種Microdochium nivaleが菌体外へセルロースを主成分とする多糖を分泌し、その分泌量は4℃で最大であることが報告された。さらに研究代表者は、このセルロースが非結晶性であることを明らかにした。M.nivaleの生産する非結晶性セルロースは分泌せいであるので精製が極めて容易であり、しかも菌体のリサイクルが可能である。このように、M.nivaleによって生産される非結晶セルロースはこれまでに見られなかった研究対象としての新規なセルロース原料となると同時に、コストと環境問題に合致した新しいエコマテリアルとなりうることが期待される。加えて、4℃という生物活性エネルギーが極めて制限された状況下で、M.nivaleがセルロースを生合成する仕組みを解明することで、生物による物質生産に関してのみならず生物の低温応答など幅広い知見の蓄積とその応用も期待される。 そこで、本年度は、低温から常温まで培養温度を上昇させ、温度ストレスをかけたときの、菌の物質生産における応答を調べた。その結果、常温では低温での培養に比べ多糖物質生産量が多く、しかもそれが低温培養で見られたβ-1,4グルカン鎖からなるセルロースではなく、β-1,3グルカン鎖からなる多糖であることが判明した。現在、糖鎖結合解析によりその構造を解析している。
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