酵母の小胞輸送におけるコートタンパク質としては、COPI、COPII、レトロマー、クラスリンが知られている。そのうち、酵母で無細胞系や再構成系で小胞形成が多く報告されているのはCOPII小胞で、COPI小胞については哺乳類細胞の研究が先行したため、酵母での実験例は少ない。COPII小胞のコートタンパク質を検出するため、ウエスタンブロットや免疫沈降で利点の多いモノクローン抗体が使える、HAでタグ標識した。Sec13タンパク質についてはC末端に3HAを連結した遺伝子を作成し、染色体上の遺伝子と相同組換えで置き換えた。Sec23タンパク質についても同様の構築を作ったところ、生育に遅延が認められ、C末端標識に問題があることが示唆された。そこでYPT1プロモーターとGAPDHターミネーターの間に、N末端に3HAをつけたSec23タンパク質遺伝子をはさみ、セントロメアベクターにのせて、染色体上のSEC23遺伝子破壊株に導入した。さらに、上記のSec13-3HAをコードする遺伝子で染色体上のSEC13を置換し、ふたつのCOPIIコートサブユニットが同時にタグ標識された酵母を得た。また、大腸菌生産系では、グルタチオンS-トランスフェラーゼのC末端に融合したGST-Sec23とGST-Sec24を発現する構築を作製し、大量発現させた融合タンパク質をグルタチオンアフィニティカラムで精製することができた。一方、COPI小胞のコートタンパク質であるRet2については、GST、6ヒスチジン、或いはマルトース結合タンパク質をN末端につけた融合タンパク質の大腸菌での生産を試みたが、材料に使えるだけの生産は認められなかった。他のサブユニットと同時に生産しないと安定でない可能性があるので、酵母内でC末端に6mycタグをつけた構築を発現させたところ、この場合は抗体で十分に産物を検出することができた。
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