研究概要 |
ゴルジ体に局在するGDP-mannoseトランスポーター(GMT)であるVig4タンパク質は、順方向の輸送が停止するsec12やsec23温度感受性変異株の非許容温度で小胞体(ER)に局在するようになり、逆行の輸送が停止するsec21株では一部液胞に輸送された。その他の結果も合わせ、GMTは、細胞内で常に小胞に取込まれて移動しており、ゴルジ体からCOPI小胞に乗りER経由でゴルジ体に戻らないと、液胞で分解される。即ち、GMTは効率よくCOPI小胞に取込まれる機構をもつので、何が小胞への取込みに関わるか調べた。界面活性剤で溶かしたGMTは、COPIコートと直接結合することが分かった。さらに、欠失体GMTの解析から、細胞質に露出するC末端親水アミノ酸配列が重要で、C末端12残基KQKKQQAQPLRKのペプチドをGST融合タンパク質として生産し調べたところ、まさしくこの配列とCOPδとの結合が認められた。この中には4残基のリジンが存在するが、それを様々な組合せでグルタミンに置換したペプチドを設計し、GST pull down実験を行ったところ、どのリジンを置換した場合でもCOPδとの結合の低下がみられ、この配列そのものがもっとも効率的な結合に必要であると考えられた。変異配列をGMTにもたせると、COPδとの結合性の低下と呼応して液胞にもち込まれてしまう割合が増加したことから、COPI小胞経由逆行輸送の重要性が確認された。一方で、Ypt1の変異による低温感受性を回復する多コピー抑制遺伝子としてCOPδをコードするRET2が高頻度で得られた。COPδとYpt1の結合をin vivo, in vitroで調べた結果、確かに結合することが認められ、他の低分子量GTPaseについても今後検討する必要があることが分かった。
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