(1)ヒト15番染色体近位部、およびマウス7番染色体遠位部のインプリント領域を解析し、この領域が数百kbから1Mb程度のラージスケールの複製タイミングドメインからなり、しかもアリル特異的なゲノムの伸縮構造を示すドメインとなっていること、このアリル特異性はヒストン脱アセチル化阻害処理によって解除されることを見出した。 (2)S期の進行に伴う複製の進行過程を解析し、複製フォークの進行速度がS期の初期から中期にかけて一端減速し、後期に最も速くなることを、独自に開発したDNAファイバー上で複製フォークの進行速度を測定する方法により見出した。また、マウス・セントロメア周辺領域の複製起点の活性化と複製フォークの進行速度はヒストンのアセチル化により制御されることを明らかにした。さらに、カンプトテシン処理によるDNA損傷時に作動するチェックポイント制御についても検討し、各種特異的阻害剤存在下での複製フォーク速度やDNA合成量を調べる実験から、DNA損傷時に、S期チェックポイント因子PI3KKが複製開始点の抑制と複製フォークの安定性に貢献することを見出した。また、この複製解析法に低張処理法を導入し、浮遊系細胞にも適用できるよう汎用化した。 (3)複製・転写等の核内イベントへの核マトリックスの関与を明らかにするため、転写誘導される熱ショックタンパク質HSP70遺伝子領域の核マトリックスとの結合状態について転写ファクトリーを含めたモデルを提示し、クロマチンドメイン形成における核マトリックスの役割に関する知見を得ると共に、非転写領域が、複製前に核マトリックスに結合し、複製後に離れることを見出した。 (4)分子コーミング技術を確立し、DNAファイバー上での複製解析へ応用する一方、インプリント遺伝子がアリル間で非同調的なタイミングで複製することをセミファイバー法を用いた独自の方法で証明した。
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