研究概要 |
クロマチンドメインの形成に極めて重要である以下の二点について解析し成果のとりまとめを行った。 DNA複製における核マトリックスの関与:まず修飾ヌクレオチドをパルスで複製時に取り込ませて核ハロー標本上で検出した結果、複製直後は取り込まれたヌクレオチドは核内にとどまっているが、チェイス30分後にはDNAループ上にも広がって検出され、DNA複製が核マトリックス上で起こっていることを示唆した。さらに複製タイミングがS期初期、中期、後期の特定のゲノム領域について解析した結果、それぞれの遺伝子領域に存在するMARはS期を通して核マトリックスに結合しているが、MAR以外のDNA配列は、それぞれの複製タイミングの時期にのみ核マトリックスと結合していることを明らかにした。また各種preRC複合体タンパク、複製ファクトリータンパクについても核マトリックスとの関係を明らかにし、これまでの成果とあわせて、複製・転写ファクトリーが核マトリックス上で機能しているモデルを提示した。 セントロメアヘテロクロマチン領域におけるエピジェネティックな制御:DNAメチル化阻害時のヘテロクロマチン領域における複製フォークの進行と複製タイミング、ヒストンのエピジェネティックな動態との相関関係について解析した。triMeK4H3,diMeK4H3はDNAメチル化阻害で、セントロメア周辺ヘテロクロマチン領域に局在する一方、triMeK9H3はこの領域では少し減少した。また、24時間の5azadC処理によって、セントロメア周辺ヘテロクロマチンにおける修飾ヒストンの変換が起きた核はS期初期では少なく、この領域が複製するS期中期以降の核で多く見られた。これらの結果から、5-azadC処理により、セントロメア周辺ヘテロクロマチン領域のDNAのメチル化が減少することで、複製タイミングが早くなり、さらに複製フォークの進行が促進されるに伴って、その後のクロマチンアッセンブリーの際、ヒストン修飾の構成に大きな変化が起こると示唆された。 さらに成果のまとめとして論文作成中である。
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