研究概要 |
グリーンケミストリーに分類できる「無臭チオール・スルフィドの開発とその有機反応への応用」と題した研究を行い、以下の成果を得た。 1)新規無臭ボラン錯体の開発:汎用されているボランジメチルスルフィド錯体の問題点は反応処理後に発生するジメチルスルフィドが悪臭を発することであった。開発したDod-S-Me及びMMS(メチル モルフォリノヘキシル スルフィド)をボラン担体として活用することにより、この問題点を解決した。すなわち、ヒドロホウ素化反応やカルボニル化合物の還元反応の処理後に悪臭を発することが無くなり、従来のボラン錯体に替わる扱いやすい無臭反応剤として、その有用性を高めることができた。 2)新規無臭有機セレン反応剤・ビス(4-トリメチルシリルフェニル)ジセレニドの開発:カルボニル基のα位への二重結合導入反応など多彩な反応に利用されているジフェニルジセレニドはセレン特有の悪臭を有することが欠点となっていた。その為、これに替わりうる新規無臭有機セレン反応剤ビス(4-トリメチルシリルフェニル)ジセレニドを開発した。この新規反応剤は、従来の悪臭のあるジフェニルジセレニドと同等以上の反応性・汎用性があり、且つ無臭という長所を有している。すなわち、無臭有機セレン反応剤を世界に先駆けて創製することに成功した。 3)新規無臭フェニルメタンチオール及びベンゼンチオール誘導体の開発とチオ糖類の合成:パラ位にオクチルオキシ基を導入することによりこれらチオール類を無臭化できることを明らかにした。また、これを悪臭のあるフェニルメタンチオールの無臭代替反応剤として活用し、チオ糖類の合成を行った。 4)新規無臭1,3-プロパンジチオール誘導体の開発:1,3-プロパンジチオールの2位にドデシル基を導入することによりジチオールが無臭になることを見出し、無臭ジチオール反応剤の開発に初めて成功した。
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