研究概要 |
平成15年度までに、エストロゲン受容体に高い親和性を有する蛍光標識エストラジオールを開発し、この試薬を用いて、蛍光偏光度測定法により20種類以上の化学物質のエストロゲン受容体への結合能(50%阻害濃度およびHill係数)を求めた。そして、Hill係数と各物質の作用様式(agonist, partial agonist, antagonist)を検討した結果、Hill係数により化学物質の作用様式が分類できることを明らかにした。 平成16年度は、受容体-化学物質複合体と、転写共役因子の結合を蛍光偏光度測定により解析した。転写共役因子としてhuman Steroid Receptor Coactivator-1(SRC1)を選び、SRC1の受容体結合部位を蛍光標識し蛍光プローブとして用いた。SRC1の受容体結合部位は、発現ベクターを大腸菌に導入しタンパク質を合成し、可溶性画分をアフィニティーカラムにより精製し得た。これをFITCで蛍光標識しプローブとした。このプローブと、受容体-化学物質複合体の二量体との結合を蛍光偏光度測定により解析し、親和性を求め、この値と受容体-化学物質の結合におけるHill係数と比較検討した。その結果、Hill係数と今回求めた親和性との間に良好な対応関係が認められた。すなわち、Hill係数が異なると、転写共役因子と受容体-化学物質複合体との相互作用に差が生じることが確認された。この相互作用に差が生じれば、エストロゲン活性にも差が生じると考えられ、Hill係数は化学物質のエストロゲン活性の指標となることが明らかになった。以上の結果、化学物質と受容体が結合することにより受容体の立体構造が変化し、受容体-化学物質複合体が二量体化する際の協同性の指標であるHill係数に影響を与えたことが確認された。
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