研究概要 |
将来の治療法として注目されている遺伝子治療において、放射線の特徴を活かして、導入した治療遺伝子の発現量・発現部位・発現期間を生きた状態でインビボイメージングする方法を開発するために、体内に導入するベクターに治療遺伝子以外に、その遺伝子の発現を核医学的手法を用いてモニターするためのレポーター遺伝子を導入し、レポーター遺伝子の発現をインビボイメージングにより治療遺伝子の発現を非侵襲的にモニターすることを計画した。そこで,本研究では、治療遺伝子としては、現在の移植医療における免疫抑制剤の問題点、全身の免疫作用を減弱させてしまうことを解決できる可能性がある免疫抑制遺伝子治療への展開を考慮して、免疫抑制サイトカインviral IL-10(vIL-10)を選択した。また、レポーター遺伝子として、遺伝子治療の対象となる末梢臓器にはほとんど存在せず、かつ産生するレポータータンパク質が生体内で反応しないために変異型dopamine D2 receptor(mD2R)の遺伝子を考案し,これを作製した。これらの結果をもとに、治療遺伝子とレポーター遺伝子とを同時に別々のタンパク質として発現させるために、internal ribosome entry site(IRES)を利用することを考え、IRESを挟んで上流側にvIL-10、下流側に変異型D2Rが存在する発現ベクター、pCMV-vIL10-IRES-mD2Rを構築した。作製したpCMV-vIL10-IRES-mD2RをHEK293細胞へ導入し、RT-PCR法によりvIL-10、mD2RmRNAの発現解析を行ったところ、それらの両遺伝子の発現が認められた。また、この細胞において、vIL-10タンパクの発現をELISA法により、D2Rをreceptor binding assayにより測定した結果、両タンパク質が発現していることを見出した。
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