研究概要 |
本研究の目的は、新規抗ウイルス薬の合理的デザインに役立てるため、インターフェロン誘導型抗ウイルス機構2-5Aシステムの主要酵素であるHumanリボヌクレアーゼLの立体構造を解明することである。Human RNase Lは741アミノ酸残基から成り、N末側がアンキリンリピートドメイン(ANK)、中央部がキナーゼ類似ドメイン、C末側がRNaseドメインであると言われている。RNaseLは不活性型単量体として誘導されるが、2-5A(2',5'-結合オリゴアデニル酸)のANKへの結合により2量体化し活性型となるという仮説が提唱されている。 我々は既にHuman RNase LのANKと2-5Aとの複合体の結晶化に成功していたが、今年度は、PF-AR NW12を用いることにより、太さ20μm程度の針状結晶であったが、1.8Å分解能の回折強度データを得ることに成功した。人工アンキリンリピート構造に基づいて作成した6リピートからなる理想構造を用いた分子置換法による位相決定に成功し、遂に、ANK/2-5A複合体の立体構造を明らかにした(Tanaka, N.et al.,EMBO J.23,3929-3938(2004))。 Human RNase LのANKは、アンキリンリピートの8回繰り返し構造をとっており、リピート4と5の間に挿入ヘリックスが存在していた。2-5Aはリピート2から4の部分に結合しており、これまでのリピート7および8に結合するという説を覆す結果であった。2-5Aの一番目及び三番目のAMP部分は、それぞれ、リピート4および2と等価な結合様式で結合していた。興味深いことに、これら2-5A認識に関与するアミノ酸残基は、アンキリンリピートの繰り返し配列上で、等価な位置に存在していた。 今回の構造解析の結果から、RNaseLに対してより高い活性化能を持ち、かつ生体内で安定な2-5A誘導体をデザインするための知見が得られた。
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