研究概要 |
脂肪細胞分化に関する研究は、マウス株化培養細胞である3T3-L1細胞を用いて種々の検討が行われている。しかし、初代前駆脂肪細胞を用いた検討はほとんど行われていない。そこで本研究では、初代前駆脂肪細胞を用いて脂肪細胞分化過程の検討を行った。 ラット皮下脂肪および内臓脂肪の初代前駆脂肪細胞を用いて、様々な条件で分化誘導実験を行い、それぞれの誘導条件がどの程度の分化能を示すかについて検討した。これらの分化誘導剤に加えてthiazolidine誘導体、9-cis retinoic acid、17β-estradiol及びtestosterone等の各種核内レセプターのリガンドを添加した場合に、分化能がどのように変化するかについて検討した。 種々の誘導条件の検討より、分化誘導後10日目において半数近くの細胞が脂肪細胞に分化するような強い誘導条件と、同じ日数でもわずかの細胞しか分化しないような弱い誘導条件をそれぞれ確立した。これらの分化誘導剤に加えて、各種核内レセプターのリガンドを添加し、分化能に対する影響を検討した。その結果、PPARγのリガンドであるthiazolidine誘導体は3T3-L1細胞と同様、脂肪細胞への分化を促進した。9-cis retinoic acidは分化を抑制した。また、17β-estradiol及びtestosteroneについては分化に顕著な影響を与えなかった。 上記分化条件において、脂肪滴の量を定量するためにトリグリセリドの定量を行い,顕微鏡下における観察結果と良く一致することを確認した。今後、これら種々の分化条件を用い、内臓脂肪と皮下脂肪の違いについて、遺伝子およびタンパク質レベルにおける差異を検討していく予定である。
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