研究概要 |
神経突起伸長促進活性をもつイカ軟骨由来のCS-Eから、グルクロン酸(GlcA)の3位が硫酸化された構造を持つ5つの新規な四糖構造を単離した。またその過程でグルコース側鎖を持つ珍しい構造の三糖と五糖も単離した(1)。正常マウス乳腺上皮細胞上に発現し、ハイブリッド型の膜結合型プロテオグリカンであることが知られているシンデカン-1とシンデカン-4に結合しているコンドロイチン硫酸(CS)鎖とヘパラン硫酸(HS)鎖の比較解析を行った。両プロテオグリカン上のHS鎖には構造的な違いが見られなかったが、CS鎖では、構造的にも、機能的にも大きな違いが見られた。特に、シンデカン-4のCS鎖はシンデカン-1のものに比べ、硫酸化の程度が高く、プライオトロフィン(PTN)やミッドカインとより強い結合親和性を示した。また、両シンデカン上のCS鎖を除去すると、シンデカンの増殖因子との結合性が低下したので、シンデカン上のCS鎖は、HS鎖と協同して、増殖因子の捕捉とレセプターへの提示を効果的にする役割を果たしていることが考えられた(2)。初代培養神経細胞に対するブタ胎児由来のCS/デルマタン硫酸(DS)ハイブリッド糖鎖(E-CS/DS)の神経突起伸長促進作用にはグリア細胞由来の内因性のPTNを介するシグナル系が少なくとも一部関与していることを明らかにした(3)。また一方で、メクラウナギの脊索(4)およびサメ皮膚(5)からそれぞれCS/DSハイブリッド糖鎖であるCS-HおよびSS-DSを精製した。興味深いことに、SS-DSには、GlcA(2S)-GalNAc(4S) (GalNAc,2S,4SはそれぞれN-アセチルガラクトサミン、2-O-硫酸、4-O-硫酸を示す)という新規な二糖単位を含んでいた。精製した糖鎖はいずれも神経突起伸長促進活性や様々なヘパリン結合性増殖因子、神経栄養因子と結合活性をもっていた。従って、E-CS/DS同様にCS/DSのハイブリッド構造が脳の発達をはじめ様々な生理的現象に重要な役割を果たしていることが示唆されるとともに、このような糖鎖の治療薬への応用の可能性が期待された。さらに、CS/DSの生理活性ドメインの構造を明らかにする目的で、CS由来のオリゴ糖マイクロアレイを用いて、CS-Dを特異的に認識する3種の単クローン抗体473HDおよびCS-56、MO-225のCSエピトープの構造解析を行った(6)。
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