アミロイドβペプチド(Aβ)はアルツハイマー病(AD)患者脳で疾患特異的に観察される老人斑の主成分であり、Aβの蓄積はAD脳で観察される様々な病理変化の最上流に位置し、進行的な神経細胞の機能障害と脱落を引き起こす引き金になる.従って、AD克服のためには脳内Aβレベルを積極的に低下させる必要がある.凝集・線維化により既に老人斑を形成したAβの分解過程には、分泌型Aβに作用して定常レベルを規定するネプリライシンとは異なる分解システムが存在すると考えられる.実際、活性型マイクログリアの貪食作用はそれに相当するが、細胞外に存在する複数のプロテアーゼも老人斑の消去に関与することが推定され、特にマトリックスメタロプロテアーゼや組織型プラスミノージェンアクチベーター(tPA)は細胞外でマトリックスを形成するタンパク質に作用して分解する能力があることから凝集・線維化Aβ分解酵素の有力な候補になる.本研究では、変異型アミロイド前駆体蛋白質(amyloid precursor protein;APP)-トランスジェニックマウスとMMP2欠損マウスまたはtPA欠損マウスとの交配を行い、これらのプロテアーゼの欠損によって脳内における老人斑形成が加速するか否かについて検討し、線維型Aβクリアランスに対する関与について明らかにすることを目的としている.本年度は、上記の掛け合わせ動物から組織化学解析用および生化学解析用に経時的に(最長24ヶ月齢)脳摘出を行い、サンプルを採取した.組織化学解析用のサンプルは、パラホルムアルデヒドにて固定し、パラフィン包埋後、組織切片を作製した.現在、老人斑形成(Aβ蓄積)の加速化について組織化学的解析と合わせて生化学的解析を開始している.
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