研究課題
人体における多様な臓器の間質の例として、腸粘膜の間質を観察した。ラットの十二指腸、空腸、回腸、大腸をとりあげ、電子顕微鏡により絨毛内の粘膜固有層上部、陰窩領域の粘膜固有層下部、および粘膜筋板より下の粘膜下層の間質の構造を、とくに細胞要素と細胞外基質に着目して観察した。その結果、腸粘膜の間質では、粘膜内の位置によってコラーゲン線維と間質細胞の配列と密度が異なり、腸上皮の直下にコラーゲン原線維と筋線維芽細胞の突起がつくる網工があるが、それ以外の間質腔では粘膜固有層上部では細胞外基質に乏しく、粘膜固有層下部ではコラーゲン原線維の小束が散在した。腸絨毛では間質の圧による外向きの膨張する力と、上皮直下のコラーゲン線維と筋線維芽細胞が作る網工による内向きの牽引力が逆方向に働き、腸絨毛を支持する力のバランスを作っていること、陰窩ではこれらの力が同方向に働いて陰窩の内腔を閉じていることが示された。また腸絨毛上部では、細胞外液を含んだ間質領域が広がり、細胞外基質の豊富な間質領域は上皮直下および柱状の縦走平滑筋束とリンパ管の周囲に限局され、両間質領域は線維芽細胞のシート状の突起により不完全に隔てられることを見いだした。縦走平滑筋は、腸絨毛頂部では筋線維芽細胞を介して腸上皮直下のコラーゲン線維網工に接続し、腸絨毛下部と陰窩の高さではリンパ管の周囲に限局し、粘膜筋板に近い固有層の最下部ではリンパ管から離れてコラーゲン線維からなる微小腱に接続していた。これらの所見から、腸絨毛内では電解質液の吸収のために増大する間質圧とリンパ管内圧に対して、腸上皮直下のコラーゲン線維と筋線維芽細胞の網工による張力、および縦走平滑筋による下方への牽引力により支持されていることが、形態学的な面から示された。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (11件) 図書 (3件)
J-Histochem-Cytochem (in press)
J-Neurochem 96(1)
ページ: 292-304
日本臨床 64 suppl
ページ: 79-83
Anat-Embryol 201(1)
ページ: 1-12
J-Histochem-Cytochem 53
ページ: 735-744
Kidney-Int 68
ページ: 542-551
J-Biol-Chem 280
ページ: 23876-23883
Anat-Sci-Int 80
ページ: 212-222
Lab-Invest 85(12)
ページ: 1528-1543
腎と透析 59(5)
ページ: 779-782
日本医史学雑誌 51(1)
ページ: 3-24