研究課題/領域番号 |
15659074
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
信國 好俊 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教授 (80295641)
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研究分担者 |
石田 万里 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助手 (30359898)
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キーワード | 蛋白合成制御 / ジフテリア毒素 / ジフタマイド / ジーントラップ / 挿入変異 / 遺伝子機能 / 挿入変異細胞ライブラリー / CHO細胞 |
研究概要 |
ジフテリア毒素感受性に関与する遺伝子群を明らかとすることで、翻訳伸長因子EF-2(elongation factor 2)のジフタマイド形成と蛋白合成制御機構の生理学的役割、ならびにその異常によるヒト疾患の発症機構を解明することを目的として研究を進めた。 OVCA1は、卵巣がんおよび乳がんにおいて高頻度でLOH(loss of heterozygosity)が見られる17p13.3領域から、ポジショナルクローニング法で単離同定されたがん抑制遺伝子である。これまでに、OVCA1の発現は腫瘍細胞で減少していること、またその過剰発現はG0-G1期の細胞の増加と細胞成長の抑制をきたし、さらに、OVCA1の強制発現は卵巣がん細胞の成長を抑制することが示されてきた。更に、OVCA1遺伝子ノックアウトマウスの解析から、OVCA1は細胞の増殖、マウス胎児の発育そして発がんの制御に関与していることが明らかとされた。以上のごとくOVCA1の生物学的ならびに細胞生物学的機能は示されたものの、その生化学的な役割は長い間不明であった。 今回我々は、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーの中からジフテリア毒素ならびに緑膿菌外毒素Aに耐性を示す変異細胞の単離に成功した。そして、この変異細胞ではジーントラップ法によってOVCA1遺伝子が破壊されていること、OVCA1の野生型遺伝子の導入発現によって変異細胞の毒素感受性は完全に回復すること、更に、がん抑制遺伝子OVCA1は翻訳伸長因子EF-2のジフタマイド生合成経路の構成成分であることを明確に示し得た。 このことから、蛋白合成制御の異常が発がんの重要な分子機構の一つである可能性を示した。また、ジーントラップ挿入変異細胞ライブラリーを用いた機能遺伝学的アプローチによる特定の機能に関与する遺伝子群の解明法を確立した。
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