RXRβのC末端を欠失させることにより、ヘテロ2量体形成能・DNA結合能は保たれるが転写を強く抑制するドミナントネガティブRXRが作られる。核内レセプターの中でもRXRとの二量体となってはじめて機能するものについては、この変異RXRを過剰発現させることにより、これらの核内受容体の機能をすべて不活化することができると考えられる。このような考察に基づき、本研究ではRXRのドミナントネガティブ変異体RXRβdc2をベータ細胞特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成し、糖代謝における異常を解析することとした。まず、インスリンプロモーターにテトラサイクリントランスアクチベーターrtTA遺伝子を結合し、この遺伝子をC57BL/6マウスの受精卵に導入し、Ins-rtTATgマウスを作成した。RXRβdc2・cDNAを、rtTAにより制御を受けるプロモーターの下流に結合した遺伝子を作成し、C57BL/6マウスの受精卵に導入し、CMV^*1-RXRβdc2 Tgマウスを作成した。Ins-rtTA Tgマウスの各系統におけるトランスジーンの発現を解析し、膵島における発現が高く、他の組織では発現しないマウス系統を決定した。CMV^*1-RXRβdc2 Tgマウス各系統におけるトランスジーンが、Tcにより誘導的に発現されるかを調べるために、rtTAを発現するアデノウイルスベクターを尾静脈から肝臓に導入し、Tcで処理前後で肝臓におけるRXRβdc2の発現誘導を解析し、Tc負荷後の誘導発現量の大きい系統を選定した。選択されたIns-rtTA TgマウスとCMV^*1-RXRβdc2 Tgマウスを交配して得られるダブルTgマウスをさらに繁殖させた。
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