研究課題
海水浴や日光浴後に疲労を感じる疲労病態により風邪や感染症に罹りやすくなる。これは日光中のUVによる免疫抑制が原因である。本現象はUVが直接皮膚に当たり、皮膚のランゲルハンス細胞の減少、ナチュラルキラー細胞の活性の減少を起こす。一方、眼から侵入したUVは、UVAは網膜から視神経を通り、UVBは角膜・虹彩から三叉神経第1枝を通り、脳から視床下部-下垂体系を介し信号を送る。精神的疲労や慢性疲労症候群はこの脳を介した疲労状態に近い。このことより、眼にUVを照射したマウスは、精神的疲労および慢性疲労症候群の実体を把握するためのモデル動物になる。本研究では疲労病態における神経・免疫・内分泌相関の調整を明らかにするために、脳に直接刺激を与える眼へのUV照射マウスを疲労モデルとし、トレッドミルによる疲労負荷マウスを対照に比較解析した。UV照射マウスは、トレッドミルによる疲労負荷マウスと同様、血中のコルチゾールおよびTGF-β濃度が有意に増加することが判明した。UV照射マウスにおいてはそのストレス応答において雌雄差があることが認められた。さらに精巣および卵巣除去マウスを用いて疲労応答病態を解析した。トレッドミル負荷において雄ではコルチゾールとTGF-βの血中濃度増加が雌より顕著であり、ランゲルハンス細胞数の減少も著しかった。卵巣および精巣摘出マウスにおいて血中コルチゾールは、運動負荷による増加は少なかった。ランゲルハンス細胞数においてもコントロール群より運動負荷群で低下するのに対し精巣および卵巣除去運動負荷群では減少が少ないことが示された。以上の結果から、運動付加による免疫低下での性差の要因として、精巣および卵巣中の性ホルモンが関与していることが示された。
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