研究概要 |
造血幹細胞移植に伴う組織片対宿主病(GVHD)の原因の一つとして、マイナー組織適合性坑原(mHa)の存在が仮定されている。mHaの同定手法は様々であるが、全く未知のmhaを探索する上では、ゲノムワイドでのアプローチが重要であると考えられる。我々は、ゲノムワイドのアプローチ、特に連鎖解析を用いた解析手法について研究を行った。 連鎖解析を用いたmHa同定手法としては、Lunettaらが連鎖解析法の一種、不一致同胞対連鎖解析法(DSP法)の応用を発表(1988年)した。しかし、mHa検出力の推定に用いたGVHD発症モデルについて、Ohashiらが臨床的に優れたモデルを提唱した(2003年)。また、DSP法に類似した手法、罹患同胞対法においてHolman's(1992年)遺伝的モデルを用いて最尤推定のパラメータ領域に制限を加えることにより検出力の上昇を報告している。我々は、DSP法を基礎として、Ohashiらの提唱したGVHD発症モデルによるパラメータ制限領域(GVHD region)を導出し、日本人の同胞間造血幹細胞移植を仮定し検出力を検討した。 GVHDモデルをDSP法の最尤推定されるパラメータの式に代入したところ、一般的なマイナーアレル頻度の条件,(0-0.5)下で、我々のはLunettaらが導出したパラメータ推定領域より限局された領域、(GVHD region)を理論的に推定した。また、推定されたGVHD regionを元にし、様々な仮設下で検出力の検討をした。より実際的に有用な情報を得るため、日本人のHLA一致同胞対間造血幹細胞移植に伴うGVHD発症率を仮定しモンテカルロ法によりシミュレーションを行ったところ、我々のGVHD regionを用いたDSP法により、HLA一致同胞対間造血幹細胞移植に伴うGVHD発症同胞対数が300組の時80%の検出力が得られることが示された。 現在、上記成果をTissue Antigensに投稿しReviseを受けている。
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