研究概要 |
ポストゲノム時代をむかえて、医学生物学研究の主眼は遺伝子産物の機能解析に移行してきており、近年様々な解析技術が開発されてきている。特に、一度に大量の検体処理可能にするhigh-throughput解析技術の進展には目ざましいものがある。我々も本助成研究にてマイクロビーズを用いたhigh-throughput解析技術である、フローアレイの開発を進めてきた。 フローアレイの第一段階として粒子径の異なるビーズを用いた、複数個所のSNPsを同時にタイピング法については既に成功している。さらに複数種類の蛍光半導体ナノ粒子(Quantum dots,以下QD)を練りこんだバーコードビーズを用い、さらに多数箇所のSNPs同時タイピング試みようとした。しかしながら、これまでに実用可能なレベルのバーコードビーズの完成には残念ながら至っていない。 また、QDはビーズに練りこむだけでなく、検出物質の標識にも使用できる。これについては細胞レベルでの蛍光免疫染色を行い、その定量性、すなわち、QDの蛍光強度が物質量と比例する(stoichiometry)ことを、従来の蛍光色素と比較、検討し確認した(現在投稿中)。QDが蛍光プローブとして細胞内物質の可視化に使用できるという報告は複数あるが、QDの細胞レベルでの定量性に言及した研究は現在までにはない。この知見はQDが生物学研究における蛍光色素として従来の蛍光色素と同様に利用できることを示している。 このようにバーコードビーズの完成には至ってないが、QDを用いたhigh-throughput解析技術の基本的なデータを得ることができた。
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