幹細胞工学を再生医療に応用する場合に必要な検証システムとしてナノバイオ・トレースシステムの創製を目的としている。本年度は再生医療の重要な細胞源とされる成体体性幹細胞、中でも骨髄間葉系幹細胞からの分化誘導基盤技術および移植技術の確立を中心に、移植細胞へのラベリング技術構築を行った。 1)心筋再生:フローサイトメトリーにてマウス骨髄間葉系幹細胞中の心筋分化能を持つ細胞群の表面マーカー発現パターンを解析した。また、寿命延長をしたヒト骨髄間葉系幹細胞を用い、マウス胎児心筋細胞との共培養系にて心筋細胞へ分化誘導する技術を確立した。 2)軟骨再生:フローサイトメトリーおよびオリゴキャップ法による軟骨細胞と骨髄間葉系細胞の発現遺伝子の網羅的解析により、軟骨分化能を持つ骨髄間葉系幹細胞の特徴を明らかにした。 3)骨再生と足場研究:形状を要求される骨組織において重要な役割を果たす細胞の足場を生体吸収性ポリマーを用いて作製し、効率的な細胞播種と生体内にて自在な形状の骨を作り出すことに成功した。 4)細胞ラベリング:既に臨床の場にてMRI造影剤として用いられているナノサイズの超常磁性体酸化鉄を用い、細胞へのラベリングを行った。効率的なラベリング条件を設定するとともに、MRIにて細胞の信号変化を確認し、生体内追跡システムとして応用可能であることを確認した。 次年度においては、臨床化に直結可能な基盤技術の整備を進めることため、移植細胞の生体内動態検証システムを確立し、細胞および足場と組み合わせることで、細胞採取から評価までの一連の再生医療プロトコール作製を目指す。
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