研究概要 |
MHC class Iにおける抗原提示機構において、HSP70の関与が知られているが、抗原ペプチドとの結合におけるペプチド側の結合モチーフをはじめとする結合の何らかの法則性は知られていない。 本研究では表面プラズモン共鳴(以下SPR)原理を用いたBIACOREによって、HSP70と抗原ペプチドの結合性を測定し、その法則性の解明を目的とした。 まず最初に、HSP70をセンサーチップ上に固相化し、結合が報告されているBw4 peptide, RENLRIALRY、結合しないとされる、Bw6 peptide, RESLRNLRGY用いて、BIACOREにて測定すると、報告にあるようにBw4において、おおよそ、Kd=10^<-6>Mでの結合がみとめられ、後者では特異的な結合が認められなかった。Bw4の結合定数はMHCが抗原ペプチドと結合するのとほぼ同等なものであった。従来の報告では放射活性をつけた標識ペプチドでの結合の有無を調べるもので、今回の様にSPRを用い、結合定数を示した結果は初めてであると思われる。 次にBw4の10個のアミノ酸配列において、N末3番目から10番目までのそれぞれのアミノ酸を19種類の全てのアミノ酸に置換した、合計152種類の合成ペプチドを作成し、HSPとの結合を調べた。その結果、10番目のアミノ酸,Tyr(Y)を他の19種類アミノ酸に置換すると、結合が著しく減少した。すなわちHSP70と結合するBw4のペプチド配列において10番目のYは他のいずれのアミノ酸においても結合の代用ができないことが示唆された。さらに興味深いことに、9、5番目においても、それぞれ独立して同じ現象がみられた。すなわちwild typeの配列のなかで、9番目のアミノ酸Rを他の19種類のいずれのアミノ酸に置換してもwild typeに見られた結合親和性は失われた。 以上の結果から、HSP70とBw4の結合において、5、9、10番目のアミノ酸が重要であることが明らかとなったが、アミノ酸置換における側鎖の化学的性質上から類推できる法則は現在のところ、見いだせなかった。
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