1.ストローマ細胞株PA6に対するモノクローナル抗体の作製:造血幹細胞からの分化を支持しないミュータント株PA6Mをラット新生児に投与し、共通のXeno抗原に対してトレランスを誘導しておき、その後PA6を投与しPA6細胞に特異的であり、かつマウスXeno抗原に対して反応を示さないモノクローナル抗体(抗PA6抗体)を作製した。抗PA6抗体により造血支持能を有する他の数種のストローマ細胞株を染色したところ、造血支持能は抗PA6抗体による染色性と相関し、抗PA6抗体によって認識される抗原が造血幹細胞からの分化過程に機能分子として寄与している可能性が高いことが判明した。 2.造血幹細胞からの分化支持能がより高いストローマ細胞株の樹立:抗PA6抗体の作製において当初抗原として用いたPA6細胞は抗PA6抗体による染色性が低く、分化過程に寄与することが想定される機能分子の精製にこの細胞株を用いることは不適当と考えられ、抗PA6抗体による染色性が強くかつ造血支持能の高いストローマ細胞株を樹立することが必要となった。胎生16日の骨・骨髄に由来する培養細胞から抗PA6抗体を強く結合する細胞をフローサイトメトリーにより選別し、目的に適したストローマ細胞株の樹立に成功した。 3.樹立したストローマ細胞株の性状:新たに樹立したストローマ細胞株は繊維芽細胞様の形態を示し、骨髄由来の培養ストローマ細胞よりも造血支持能が高く(少数の細胞で造血を支持)、顆粒球系、単球系、赤血球系への分化を支持し、また注目すべきことに生体内ではリンパ球系(T細胞、B細胞両者)への分化を支持することが明らかになった。 4.造血支持機能を有する分子の解析:新たに樹立したこのストローマ細胞株を用い、抗PA6抗体により認識される抗原を造血支持機能分子と仮定しその精製と同定を行った。その結果、抗PA6抗体により認識される物質は135kDのタンパクであり、グリア細胞上に発現するCaspr3と相同であることが明らかにされた。
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