細菌は、増殖の定常期状態やアミノ酸・糖などの栄養が枯渇した環境、あるいは酸化的ストレスなどのストレス環境下では、緊縮応答(stdngent response)によってこれらの環境変化に適応し、生存を可能にする。本研究は、Salmonella enterica serovar Typhimuriumにおいて、ppGppにより遺伝子発現調節される病原因子を同定し、マクロファージ細胞内環境への適応メカニズムを解明することを目的とする。平成16年度は、アガロース二次元電気泳動法(アガロース2-DE)を用いたppGppにより発現調節される因子の同定を試みた。まず、S.Typhimurium ATCC1402ナリジクス酸耐性株SH1OO(親株)とrelA spoT二重変異株を様々な培養条件下において培養し、全菌体たん白質をアガロース2-DEにより、展開・分離した。また、平成15年度に同定したppGPPにより発現制御される3っのビルレンス形質、Salmonella pathogenicity islandl(SPI-1)、Salmonella pathogenicity islandl(SPI-2)およびspv領域のたん白質が実際にrelA spoT二重変異株において発現が低下していることを確認するために、それぞれの変異株を同じ条件下で培養し、全菌体たん白質を比較した。現在、すでに同定されたもの以外のたん白質についていくつか確認し、LC-MS/MSを用いて、同定することを行っている。本研究の成果から、ppGppによって制御される遺伝子を同定し、さらに、マクロファージ内においてSalmonellaの増殖に必要な遺伝子を分離するための基礎的なデータを得ることができたものと考えられる。
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