研究概要 |
プロバイオティクスの研究は近年盛んとなり,さまざまな疾患に対するプロバイオティクスの効果について,いろいろな報告がなされるようになってきたものの,感染症,特に免疫不全状態における日和見感染症に対して,プロバイオティクスがどのような効果をもたらすことができるか,については未知の点が多い.そこで今回,私どもは実際に市販されている食品に応用されているビフィズス菌を用いて,私達が従来用いているマウス緑膿菌内因性敗血症モデルにおけるプロバイオティクスの効果を検討することを目的として検討を行った。緑膿菌内因性感染モデルの作製は,ICR,雄,4〜6週令,SPFマウスに緑膿菌D4株を0.45%滅菌食塩水に懸濁し飲水として与え、同菌を腸管内に定着させた。その後サイクロホスファマイド150〜200mg/kgを2〜3回投与し免疫抑制状態とし、腸管内に定着した緑膿菌がtranslocationを起こして肝臓および腸間膜リンパ節に到達し,さらに全身性に菌が巡り敗血症を惹起させた。この実験系を用いて,まずBifidobacterium longum BB536,およびB.breve ATCC15700の各菌株をそれぞれ懸濁させた菌液0.2mlを経口ゾンデを用いてマウスに1日1回,10日間投与した.対象群には菌を含まない菌末倍散剤(コントロール)を滅菌水に同量懸濁させ経口的に投与した.上記の検討の結果,マウスの生存率に関してはB.longum BB536投与群は,他のB.breve投与群および対象群と比べて有意な生存率の上昇を示した.肝臓および血液内の菌数はB.longum BB536投与群で有意に低下していた.これらの結果から,B.longum BB536は腸管由来の緑膿菌性敗血症に対する予防効果を有することが示唆された.
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