研究概要 |
B型肝炎患者の非癌部肝組織においてpreC-Cプロモーターから転写されるアンチセンスRNA (C-asRNA)を見い出した.5'RACEによる解析では,大部分はポジション1655から転写が開始され,約700bp下流のTTTT配列で終結していた.転写開始点の22bp上流に点突然変異をもりウイルスでは,その開始点が上流に移動していた.よって,C-asRNAはRNAポリメラーゼIIIにより転写されていることが示唆された.スプライシングを受けた分子は存在せず,量はセンスRNAの0.05-0.4%であった.C-asRNAにあるORF6は開始コドンを欠くものがあったので,ORF6蛋白はウイルス増殖に必須ではないと考えられる(J.Gen.Virol.84:1907-1913,2003).幾種類かのNorthen blotを試みたが,dicer消化によって生じうるHBV-RNAの21nt断片は検出できなかった. 潜伏感染状態で多くのC-asRNAが発現するのかどうか検討したが,HBs抗体陽性の既感染者には検出できなかった.一方,持続感染(慢性肝炎)ではC mRNAの少ない者ほどC-asRNAが多い傾向が認められた(投稿中). ポジション2505付近でpolyA付加される第2のアンチセンスRNAを見いだした.その開始点は,ポジション2700前後であった.すなわち,preSプロモーターからの0.7-kbにおよぶ長いアンチセンスRNAではなかった.preSプロモーターから転写される第3のアンチセンスRNAを見い出し,PreS領域のlucアッセイで弱いアンチセンス転写活性を確認した.しかし,転写は下流の至るところで中断していたので,core mRNAなどのセンス方向の転写により阻害されていること,および,RNAポリメラーゼIIによって転写されていることが示唆された(投稿中).
|