研究概要 |
モルモット腹腔より好酸球を単離し,A23187によって好酸球を刺激した.好酸球活性化の指標として,細胞外へのeosinophil peroxidase(EPO)の遊離を測定した.モルモット腹腔好酸球に,β_2受容体アゴニストであるfenoterol (10^<-6>M)を作用させると,作用させる時間が5分間以内の場合には,fenoterolは好酸球からのEPO遊離は強く抑制された.これは,β_2受容体刺激によって生じる細胞中cAMP濃度の上昇とよく相関していた.しかし,fenoterolを作用させる時間を延長するとともにfenoterolによるEPO遊離抑制作用は減弱し,作用時間を120分間とした場合には,好酸球からのEPO遊離は全く抑制されなくなった.この状態では好酸球の細胞内cAMP濃度は,正常備に回復しており,β_2受容体の脱感作が生じていた.一方,β_2受容体が脱感作された好酸球にphosphodiesterase 4(PDE4)阻害薬であるtheophylline及びrolipramを作用させたところ,正常な好酸球に比較して,これらのPDE4阻害薬に対する感受性が約100倍亢進していた.ここで見られたβ_2受容体の脱感作された好酸球のPDE4阻害薬に対する感受性の増大は、これらの細胞にあらかじめtyrosine kinase阻害薬のgenistein,あるいはSrc tyrosine kinase阻害薬のPP2を作用させておくことで完全に抑制できたことから,β_2受容体刺激とその脱感作に平行して,好酸球の細胞内ではSrc tyrosine kinaseの活性化が生じ,その結果PDE4の薬物感受性増大が生じたものと考えられた.今回の細胞レベルでの結果が,実際の炎症のみならず,好酸球の生体内におけるどのような作用と関連するかについても検討中である.
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