大動脈炎症候群において、これまでの各種血液検査及び画像所見では早期診断や活動性の判定は困難であった。その理由としては炎症反応は特異度が特に悪く、また画像診断では血管病変の拡張、狭窄などの血管病変の進行がなければ同部位に炎症があるのかどうか判定する事が出来ないからである。位相差トラッキング法は壁の微小な部位における微小な動きを測定する事ができるエコー法であるが、この方法を用いる事により動脈壁弾性を測定する事が出来るようになった。同法を使用する事によって動脈壁の形状のみでなく、炎症所見などの性状を直接的に測定する事が可能となった。今回我々は同法を用い正常人18例、頚動脈病変を有する大動脈炎活動期11例、非活動期25例の頚動脈動脈壁の弾性を測定し同法の大動脈炎診断の有用性を検討した。結果として、各種病態における平均壁弾性は正常人318kPa、活動期91kPa、非活動期320kPaとなり活動期にて有意に著明な壁弾性の低下(柔らかい病変として計測された。)を認めた。このうち活動期症例中8例においては治療前後で壁弾性を比較する事が可能であったが、その結果すべての症例で活動期には柔らかい病変であったものが治療により通常の硬さの病変へと変化した。壁弾性の平均値を指標として活動性の判定をする際カットオフ値を150kPaと設定することにより、活動性を判定する感度、特異度ともに100%となりCRPなどの炎症マーカーより信頼できる活動性判定のマーカーとなる事が判明した。
|