研究概要 |
本研究では、微量化学物質による生体機能障害の包括的な評価法、特に次世代の神経系の分化・増殖、中枢機能発現に対する評価法を確立し、その作用機構を明らかにすることを目的とする。 本年度は、主に次に示す2つの評価系に関する研究を推進した。 1.微量化学物質による神経細胞の分化に対する影響評価系の確立 微量化学物質による神経細胞の分化に対する影響評価系を確立するために、種々の化学物質をNGFと共にPC12細胞(分化過程で神経突起の伸長開始)に添加し、その分化能への影響を検討した。その結果、トリブチルスズなどのいくつかの化学物質は微量で神経突起の伸長を阻害することが明らかになった。 2.微量化学物質によるアポトーシスに対する影響評価系の確立 神経細胞が有機的に結合し、機能を発現するためには、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の段階が必要であること、種々の化学物質がアポトーシスを誘導することに着目し、PC12細胞を用いてアポトーシスを誘導し、その細胞に対する微量化学物質の影響を検討した。その結果、トリブチルスズ、2,4,5-Tなどの化学物質は、微量でアポトーシスを抑制すること、逆にノニルフェノールはアポトーシスを促進することが明らかになった。このノニルフェノールによるアポトーシスの促進機構を明らかにするために、アポトーシス関連因子の変動を検討した。その結果、アポトーシス促進因子の一つとして知られるBadの発現量がノニルフェノールの添加でさらに増加することが明らかになった。さらに、ノニルフェノールによるアポトーシス誘導の促進は、キャスパーゼ-3のインヒビターの添加により抑制されることから、ノニルフェノールによるアポトーシス誘導の促進は、キャスパーゼー3を介した促進機構であることが明らかになった。
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