研究概要 |
我が国における大気中浮遊粒子状物質に係る環境基準の達成率は、大都市およびその周辺地域において依然として低い水準で推移しており、その改善が急務となっている。疫学調査より、大気中浮遊粒子状物質による長期曝露とアレルギー、喘息様疾患および循環器疾患に係る死亡率との間に正の相関性が見出されているが、その詳細なメカニズムは明らかにされていない。 我々は大気中ナノ粒子(PM2.5)の新規成分として1,2-ナフトキノン(1,2-NQ)を同定した。興味あることにこのキノン系化合物はモルモット気管リング標本を用量依存的に収縮した。種々のアンタゴニスト実験より、1,2-NQによる気管収縮にはカプサイシンレセプター、タキキニンおよびL型カルシウムチャンネルが関与することが明らかとなった。1,2-NQによるカプサイシンレセプターの活性化には気管上皮細胞の膜画分に存在するレセプター型チロシンキナーゼのリン酸化が関係することも示された。ナフタレン関連化合物を使用した気管収縮実験の結果より、1,2-NQの気管内タンパク質システイン残基との共有結合が気管収縮に必須であることが明らかとなった。 そこで、1,2-NQをヘモシアニンに結合させたハプテンをウサギに感作させて得た1,2-NQと共有結合するタンパク質を認識する抗体を作成した。本抗体を用いてイムノブロット分析を行った結果、1,2-NQと共有結合する複数のタンパク質が存在することが明らかとなった。
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