医学教育におけるホルムアルデヒド曝露を低減するためのナノテクノロジーの活用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15659143
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 圓藤 吟史 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (20160393)
• 研究分担者: 吉田 香 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助手 (10336787) ; 中島 裕司 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (80207795) ; 木山 博資 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 教授 (00192021) ; 圓藤 陽子 関西医科大学, 医学部, 講師 (50193438)
• キーワード: ホルムアルデヒド / 室内環境 / シックハウス症候群 / 医学教育 / 解剖実習 / 光触媒 / ハチル型酸化チタン / 可視光

研究概要

文部科学省は、学校環境衛生の基準を2002年に改訂し、環境中ホルムアルデヒド濃度は100μg/m^3以下とした。しかし、解剖学実習時におけるホルムアルデヒド曝露は高濃度で、その基準値を遵守しようとすれば、局所排気装置を設置するなど、大規模な改造が必要とされる。我々は大規模な改造をしないで、ホルムアルデヒド曝露を軽減する対策を開発するために、白金ナノ粒子担持ルチル型酸化チタンをコーティングした白色蛍光灯を光触媒装置として、チャンバー実験ならびに、解剖準備室に導入し、その効果を環境測定により評価した。
1m^3のアルミ製チャンバーに2本の38W型光触媒蛍光灯または通常蛍光灯を点灯し、アセトアルデヒド7.0mlと250mlのキセノンガスを気散させ、チャンバー内空気をガスクロマトグラフ質量分析計で経時的に測定した。アセトアルデヒド濃度は光触媒蛍光灯では対数的に減少し、半減期は3.1時間であった。通常蛍光灯ではその減少は認められなかった。
解剖準備室には12個の遺体安置用ローカーが置かれ、それを除く気積は199.0m^3であった。測定時の温度は20.4〜22.8℃、湿度は36.5〜60.4%、換気回数は1時間に25回であった。24本の38W型光触媒蛍光灯を設置した時と、通常の蛍光灯を設置した時、及び遺体取出し・解剖作業のあるなしの時の環境中濃度を測定し比較した。遺体取出し・解剖作業のない時では、光触媒蛍光灯下のホルムアルデヒド濃度は通常蛍光灯に比して低下していたものの有意差は認められなかった。しかし遺体取出し・解剖作業時では、光触媒蛍光灯下のホルムアルデヒド濃度は通常蛍光灯に比して有意に低下していた。解剖作業ありの場合、光触媒による推定分解量は1日約1.7gと推定された。解剖作業におけるホルムアルデヒド濃度を低減させるには、換気に加えて光触媒蛍光灯による低減が有効であると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] 圓藤陽子, 安部みき子, 中島裕司, 木山博資, 宮崎竹二, 竹内靖人, 小松晃雄, 圓藤吟史: "光触媒蛍光灯による室内環境中ホルムアルデヒド濃度の低減化 その1.医学部解剖学準備室における実験"生活衛生. 47・5. 261-268 (2003)
• [文献書誌] 圓藤陽子, 河合俊夫, 竹内靖人, 平田衛, 荒記俊一: "ホルムアルデヒドパッシブサンプラーの捕集率検討について"産衛誌. 45(suppl). 656 (2003)
• [文献書誌] 圓藤陽子, 池田浩己, 宮崎竹二, 圓藤吟史: "光触媒蛍光灯による室内環境中ホルムアルデヒド濃度の低減化"日本公衆衛生学雑誌. 50・10. 919 (2003)
• [文献書誌] 東実千代, 磯田憲生, 疋田洋子, 宮崎竹二, 竹内靖人, 河合俊夫, 圓藤陽子: "室内のフタル酸エステル濃度と健康影響に関する事例研究"家政学研究. 50・2. 1-10 (2004)
• [文献書誌] Shibata E, S Araki, Hirata M, Endo Y, Kawai T, Takeuchi A: "Proceedings of 2003 International Symposium on Indoor Air Quality and Health Hazards"Assessment and control of sick house syndrome at work--Exposure to chemicals in construction.. 311 (2003)