研究概要 |
本年度は3カ年計画の初年度のため、主として、本研究を行うに当たっての計測系の基礎的検討及びコホート内症例対照解析を可能とするために、追跡集団の循環器疾患(脳卒中・心筋梗塞)の発症調査及び追跡打ち切り者(死亡・転出)の確定を行った。 その結果、血清の凍結保存及び同意書の揃っている追跡集団5,400人中、156名の生存転出による打ち切り例、344名の死亡を確認した。さらに、これまで同様に継続してpopulation-basedに循環器疾患発症調査を実施し、1994年1月1日〜2002年12月31日の間の発症として、脳卒中1,188名、心筋梗塞274名の登録を完了し、次年度以降、nested-case control studyを行うためのデータベースの作成を行っている最中である。 計測については、本研究計画通り、頸動脈超音波検査を実施している者について先に計測を開始し、TGFβ_1は頸動脈硬化所見との正の関連を認め、一方で、VEGFは脳卒中有病と正の関連を示唆する所見が得られた。本来、NOは動脈硬化抑制因子とされており、予防対策にこれらの指標を用いるための評価として、血管内皮に関連するNOのシグナル伝達経路の上流側に位置するVEGFと下流側に位置するTGFβ_1とを併せて検討するためには、断面的解析では不可能であることが明らかとなり、間接的に研究仮説を指示する所見が得られた。次年度以降、脳卒中の病型別のnested-case control studyを実施するために、対照のマッチングを改めて実施し、本格的に計測を開始する予定である。 尚、本コホート集団の追跡調査及び解析については、疫学研究倫理指針に基づく倫理審査の承認を得ている。
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