研究概要 |
本年度は3カ年計画の2年目にあたり、循環器疾患追跡調査とそのデータベースの完成を主たる目標として研究を実施した。E県A市において1997-1998年の間にベースライン調査を実施し、その後、追跡調査を実施している地域集団(男女計4,434人:40〜79歳)を本研究の母集団に用い、転出及び死亡状況の把握を行い2002年12月31日までの追跡情報を集約した結果、計21,218人年のデータセットの作成が完了した。またWHO/MONICAの診断基準に即して94例(71±7歳)の循環器疾患発症を把握した(脳梗塞71例、脳出血及びくも膜下出血14例、心筋梗塞9例)。これらの循環器疾患発症者のうち脳卒中例をcase群として、性・年齢をマッチさせたcontrol群を同一コホート内から1:2の割合で抽出し、凍結血清を用いてVEGF及びTGFβ1の測定を実施した。これまでに測定の完了した者の内、controlに相当する159例(男性93例,女性66例:平均61.1±12.8歳)を用いて既知の循環器疾患危険因子との関連について共分散分析により性・年齢・喫煙状況を調整して解析を行った。その結果、TGFβ1は、血清総コレステロール値の増加(4category)に伴い有意な上昇を認めた。また、循環器疾患危険因子(高血圧・高脂血症・耐糖能異常・肥満)の集積に伴い有意な増加を示し、本指標によりNOの作用メカニズムの下位側の評価が可能であると推定される。 これまでの本研究経過から、新しい循環器疾患危険因子であることの可能性が示唆されることから、最終年度にあたる次年度は、case : controlを1:3の割合で抽出し、追加症例についても測定を行うこととする。また、ELISA試薬の改良によって、本指標は安定して測定できることも確認できており、今後の循環器疾患対策の新しい指標として公衆衛生上の意義が高いと考えられる。
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