目的:致死的疾患の代表であるがんに罹患し、その診断病名の告知を受けることは極めて高い心理的ストレスをもたらすことが知られており、様々な治療的介入が試みられている一方で、そのストレス緩和に広く有用な方法は国際的にも確立されていない。一方、近年、うつ病をはじめとする精神疾患発現との関連およびこれら精神疾患の治療における有用性が示唆されている栄養成分の一つとしてn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFA)が注目されている。本研究では、わが国において頻度が高い難治がんの代表であり、かつ患者の抱える心理的ストレスが高いことが知られている肺がん患者を対象として、肺がんの告知後・治療前の時期における心理的ストレスとn-3PUFA摂取量との関連を明らかにすることを目的とする。 対象:国立がんセンター東病院呼吸器科にて新規に未治療原発性肺がんの患者と診断された患者のうち、(1)肺がんの診断告知がされている、(2)本研究に対するインフォームドコンセントが得られている、(3)本研究への参加(1時間程度のアンケート調査)に耐えうる程度の身体状態にあり認知機能の障害(痴呆、せん妄等)がないものを対象とした。 方法:対象症例が入院後、がんに対する治療が開始される前に、心理的ストレスと食事習慣について調査を行った。心理的ストレスは、わが国のがん患者において信頼性・妥当性が確立されている不安、抑うつの自己記入式の評価尺度であるHospital Anxiety and Depression Scaleを用いて評価した。がん診断告知以前のn-3PUFA摂取量は、半定量食物摂取頻度調査票がんセンター臨床疫学研究部版を用いて評価した。 平成15年度の成果:本年度は、研究に先立ち、施設の倫理審査委員会に研究プロトコールを提出し、研究の科学性、倫理性の審査を受け、承認を受けた。また、患者データベースを構築し、現時点で300名を超える症例集積が終了した。
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