研究課題
病気の原因となる核ゲノムにおける遺伝的変異型の判定と異なり、多くのミトコンドリア病は後天的に組織・臓器により異なる割合のヘテロプラスミーを示すので、末梢血DNAを用いた確定診断は容易ではない。このことがSIDSにおけるミトコンドリア病の認知と死亡の原因としてのミトコンドリア病を疑う機会を奪っているものと考えている。今回、われわれの開発したAPLP(amplified product-length polymorphism)法は、SIDSの診断のための末梢血DNAを用いたミトコンドリア病の高感度スクリーニング法として、どの程度有用か検出系を確立し検討した。1例としてミトコンドリア病(MELAS)である塩基番号3243のAからGへの置換を検出するAPLP系を確立し、実験的に合成したDNAおよび末梢血DNAを用いて検査したところ、病的塩基置換が0.1%程度のヘテロプラスミーでも効率よく検出することが可能となった。また塩基の欠失変異についても検出を行った。以上のような研究を通して、これまでミトコンドリア病との関連が指摘されている数箇所の塩基置換を同時に検出できるマルチプレックスAPLP法を確立することにより、ヘテロプラスミーによるミトコンドリア病の末梢血らの高感度診断法を検討した。0.1%程度の塩基置換のヘテロプラスミーに対しての検出が可能となれば、従来検出の困難であった末梢血DNAからのミトコンドリア病の診断が容易に可能となる。SIDSのDNAを用いてミトコンドリアの変異を検討したが、今回ミトコンドリア病の疑われる個体は見つからなかった。しかし、このような検討を通してミトコンドリア病の診断と実態の解明が一段と進むことが期待される。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (1件)
Electrophoresis 26・1
ページ: 91-98