研究概要 |
ミドルボアキャピラリーGC/MSの欠点のつとして、1=2μLの有機溶媒もしくは精々0.1mL程度の気体サンプルしか注入できないことが挙げられる。これまでは、これ以上のサンプルを注入する場合にはスプリット法といって、一定の比率でカラム導入以前に大半を排気し、その数パーセント程度をカラム内に導入する方法しかなかった。今回の研究の特徴は大容量のサンプル中の目的物質の全量をカラム内に導入可能とし、感度を飛躍的に向上させる事を目的とするものである。 1)主要設備:すでに当教室に設置されているGC/MS装置(島津製作所製、GC/MS-QP5050A)を大胆に改修した。GC装置の上部金属板に丸い穴をあけ、ジャフト付きバルブをオーブン内に取り付けた。 2)スイッチングバルブの選定:ミドルボアキャピラリーGCでは流路に、たとえ10μLの死腔があってもピークが変形し、高感度検出ができなくなることが分かった。そのためスイッチングは極力死腔容量が小さいものを選定する必要がある。さらに、GCオーブン温度は0℃近くの低温から300℃近くの高温の使用に耐えられるものでなくてはならない。種々のメーカーのものを検討した結果、バルコ社製のGCキャビラリー用スイッチングバルブ以外には使用できるものはないことが判明した。その中でも最も構造が単純な3ポジション型で,しかも高温耐熱タイプを選定した。 3)スイッチングバルブの取り付けの工夫:もしスイッチングバルブがGCオーブンの外に取り付けることができれば,バルブの切り替えが容易である。GCキャビラリーカラムの遠位端を金属キャビラリーと接続し,断熱的にしながらオーブン外に金属キャビラリーを引き出し,小型恒温槽内のスイッチングバルブに導き,再びオーブンに戻し,MSに導入するシステムを考え実験を行った。ところが,このシステムでは接続部位が4箇所と多く流路に漏れが生じ,しかもナフタレンを試料とした場合には金属キャピラリーにおける少々の冷却でもナフタレンのピークが著名に小さくなり,GCオーブン外スイッチングシステムは総合的に不可能であることが判明した。結局は上記の通り,GC装置の上部金属板に丸い穴を開けシャフト付3ポジション高温バルブを取り付けることにより,一応ナフタレンのシャープなピークを得ることに成功した。 次年度では続けてナフタレンを試料として用い,このシステムがどの程度優れているかを検証する予定である。
|