研究概要 |
本研究は、脳挫傷に特異的に発現する遺伝子を同定し、脳虚血との異同を明らかにし、脳挫傷の病態の理解に寄与することを目的とする。即ち、脳挫傷と脳虚血の動物実験モデルにおいて、Differential Display法を用いて遺伝子発現の差異を調べ、脳挫傷に特異的に発現する遺伝子を同定する。Differential Display法とは、異なる条件下で発現するmRNAの差異を見つける方法であり、mRNAを逆転写した後、PCRにて増幅を行い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動のパターンを検体間で比較するものである。 本研究の研究期間は本年度から3年間であり、これまでに行った研究は下記のとおりである。 1.マウス30匹(6週齢・30g前後)を全身麻酔し、頭蓋骨の頭頂骨正中部に電気ドリルで骨窓を開けて硬膜を露出した。また、脳損傷作成装置(米国Dragon Fly社製、Fluid Percussion Device)を装着し、衝撃を加えて脳挫傷を作成した。 2.尾静脈から採取した血液についてポータブル血液分析器(i-STAT 200型)でガス分圧(sO2,pO2,pCO2,pH)を測定した。 3.脳をホルマリン固定し、凍結切片とパラフィン切片を作成した。多種類の一次抗体(リン酸化・非リン酸化Tauなど)を用いた免疫組織化学とTUNEL法によるアポトーシスの検出を行って神経細胞障害の有無を調べた。 4.処置群と非処置群のマウスを比較検討したところ、脳挫傷作成によって血液酸素分圧が低下して神経細胞の虚血が生じていた。従って、脳挫傷と脳虚血の異同を調べる本研究では脳挫傷作成による脳虚血の影響を考慮する必要があることが判った。 5.現在、脳挫傷マウスからmRNAを抽出する作業を進めており、Differential Display法の準備を行っている。
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