研究概要 |
本研究は、脳挫傷に特異的に発現する遺伝子を同定し、脳虚血との異同を明らかにし、脳挫傷の病態の理解に寄与することを目的とする。即ち、脳挫傷と脳虚血の動物実験モデルにおいて、分子生物学の手法を用いて遺伝子発現の差異を調べ、脳挫傷に特異的に発現する遺伝子を同定する。 平成16年度に行った研究は下記のとおりである。 1.マウス20匹(6〜7週齢・30〜35g前後)を全身麻酔し、頭蓋骨の頭頂骨正中部に電気ドリルで骨窓を開けて硬膜を露出した。また、脳損傷作成装置(米国Dragon Fly社製、Fluid Percussion Device)を装着し、衝撃を加えて脳挫傷を作成した。 2.脳挫傷作成の前後で尾静脈から血液を採取し、ポータブル血液分析器(i-STAT200型)でガス分圧(sO2,pO2,pCO2,pH)を測定した。 3.脳をホルマリン固定し、凍結切片、ビブラトーム切片及びパラフィン切片を作成した。多種類の一次抗体(リン酸化・非リン酸化Tau、GFAP、nitroguanosine、heat shock protein、NeuN、c-fosなど)を用いた免疫組織化学とTUNEL法によるアポトーシスの検出を行って神経細胞障害の有無を調べた。 4.脳挫傷部分の神経細胞とグリア細胞について細胞内タンパクとアポトーシスの経時的変化を明らかにした。また、c-fosの特異的な局在を明らかにした。 5.現在、脳挫傷マウスからmRNAを抽出する作業を進めており、c-fosのRT-PCR法、Differential Display法やマイクロアレイ法などの手法を用い、脳挫傷に特異的な遺伝子同定の準備を行っている。
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