研究概要 |
私達の作成/解析したNa,K-ATPaseα2サブユニット遺伝子欠損ヘテロマウスは、恐怖/不安に関連した行動に異常を示すと同時に生後3ヶ月以降に肥満を呈する。前年度までにヘテロマウスのメスは肥満になることが明確となったが、その原因として、脂肪細胞の分化や機能が変化したためではなく、神経系の異常によって肥満が起きている可能性が高いことを明らかにした。本年度はマウスの摂食量、基礎代謝を測定して、肥満の機序を明確にする実験及び観察を行った。 (1)Na,K-ATPaseα2サブユニット遺伝子欠損マウスと野生型マウスの摂食量を比較した。12時間ずつの明暗サイクルに分けて、メスの摂食量を測定したところ、ヘテロマウスはこ野生型よりも、明期での摂食量が増加していた。体重に有意差が現れないオスにおいても、ヘテロマウスの摂食量は野生型よりも増加していた。 (2)Na,K-ATPaseα2サブユニット遺伝子欠損ヘテロマウスと野生型との体温、酸素消費量、二酸化炭素産生量及び呼吸商を比較したところ、二酸化炭素消費量がヘテロマウスで増加していた他は、有意差が見られなかった。従って、基礎代謝量の変化によって肥満が生じたとは考えられなかった。 (3)明期での摂食量を制御する摂食ペプチドの発現に差があるかどうかを検証するために、視床下部からmRNAを単離し、オレキシン、POMC、NPY、MCHのmRNA量をRT-PCRにて比較検討した。ヘテロマウスメスにおいて、オレキシンの量が低下していた他は、mRNAの発現量に差が見られなかった。 これらの結果から、ヘテロマウスのメスは明期の摂食量が増加することによって肥満になることが明確となったが、その原因は現在のところ明確にできていない。昼夜のリズム制御の異常などがひとつの原因とも考えられるが、今後の検討が必要である。
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