研究課題/領域番号 |
15659163
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
下瀬川 徹 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (90226275)
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研究分担者 |
木村 憲治 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (90359513)
正宗 淳 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (90312579)
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キーワード | Macrophage migration inhibitory factor(MIF) / 急性膵炎 / TCA膵炎 / CDE膵炎 |
研究概要 |
急性膵炎は高い罹患率と死亡率を有する疾患であり、その原因や病態については未だ不明な点が多い。Macrophage migration inhibitory factor (MIF)はマクロファージの遊走を阻止する因子として発見され、近年、敗血症などの各種疾患の病態に深く関与していることが明らかになっている。我々はこれまでラット出血壊死性急性膵炎モデル(TCA膵炎)において、その腹水、血清及び肺組織中のMIF濃度が有意に上昇すること、また、重症急性膵炎患者の血清中のMIFレベルが健常者及び軽症膵炎患者と比較し有意に高値であることを報告してきた。本研究は、MIFをターゲットとした急性膵炎治療の可能性について検討した。出血壊死性急性膵炎モデルとして、Wistar系雄性ラットの胆膵管に5%タウロコール酸を逆行性に注入することによりTCA膵炎を、またCD-1雌性マウス(10-12g)にコリン欠乏性エチオニン添加飼料(CDE)を48時間摂食させることによりCDE膵炎を各々作成した。TCA膵炎ラットにおいて、膵炎誘導1時間前、1時間後に抗MIF抗体(16mg/kg)、または同量のコントロール抗体(ウサギIgG)を腹腔内に投与した。CDE膵炎マウスにおいて、CDE食開始と同時に12時間毎に5回、抗MIF抗体(10mg/kg)、または同量のコントロール抗体(ウサギIgG)を腹腔内に投与した。これら両群間の生存率について比較検討した。TCA膵炎作成1時間前に抗MIF抗体を投与すると生存率が44%から88%と有意に改善した(p<0.05)。抗MIF抗体を膵炎作成1時間後に投与した場合、有意差は見られないものの生存率の改善傾向を認めた(39%から61%、p=0.18)。CDE膵炎ラットに抗MIF抗体を投与することにより膵炎作成72時間には生存率が16%から37%と有意に改善した。以上より、MIFをターゲットとした急性膵炎治療の可能性が示唆された。
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