本研究では、未だラット及びマウスクローニングされていないラモチリンをクローニングすることを目的として実験を行った。ヒト、イヌ、ニワトリなどこれまで同定されているモチリン塩基配列とラットゲノムデータベースからのホモロジー検索によりモチリンエクソン2に高い相同性を示す配列をラットゲノム配列から見出した。RT-PCR法を用いた検討によって、ラット十二指腸cDNAからラットモチリンエクソン2と予想された116bpの塩基配列を実際にクローニングすることに成功した。また、この配列の各組織における発現を検討した結果、脳、下垂体、甲状腺、十二指腸、空腸、回腸、そして精巣など生体内に幅広く発現していたが、他の動物で報告されているのと同様に十二指腸において最も多く発現していた。次に、ラットゲノムデータベースからのホモロジー検索からヒトモチリンエクソン4に高い相同性のある配列を見出し、RT-PCR法を用いてクローニングを行った。その結果、これまで得られていたエクソン2部分を含む206bpの断片が得られた。この得られた配列は、ヒトモチリンのエクソン3に相当する領域が抜けており、エクソン2とエクソン4に相当する領域がつながっていた。今回得られたラットモチリン配列は、シグナルペプチドとモチリンのアミノ酸22残基をコードしており、N末端側はこれまで報告されている鳥類を含む動物種間で保存性が高かった。得られた配列からペプチドを合成し、これまでラットで報告されているモチリンの成長ホルモン分泌効果を検討したが、成長ホルモン分泌刺激効果は観察されなかった。また、ラットモチリンの消化管収縮に対する作用についてウサギを用いて検討したが、ラットモチリンの消化管収縮効果は、ウサギモチリンと比較して約1000分の1程度であった。以上の結果は、ラットにおいてモチリンは他の動物種と異なり短くなっていること、そして異なった生理作用を有している可能性を示唆した。
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