研究概要 |
【目的】小動物を用いたHCV感染モデルは確立していない。我々はヒト肝細胞をuPA/scid mouseに移植してhuman hepatocyte chimeric mice(以下キメラマウス)を作製し,HCVを感染させることにより肝炎ウイルスキャリア動物モデルの開発を行った。【方法】戻し交配により得られたuPA/scid mouse(2〜6週齢)に対して,生後9ヶ月のヒト肝細胞を経脾的に移植しキメラマウスが作製された。キメラマウスのヒト肝細胞置換率(以下キメラ率)は肝組織のサイトケラチン8/18による免疫染色およびマウス血中ヒトアルブミン濃度により算出し,HCV陽性患者血清を頚静脈より接種した。接種後2週間ごとに採血し,RT nested-PCRで感染成立を検討した。また,real-time PCRでそれぞれのウイルス量を定量的に測定した。【成績】キメラ率が20%未満ではウイルス血症の確認は困難であった。キメラ率30%以上のマウスでは非凍結血清の接種後2週目よりHCV感染成立および持続感染が確認され、10^4-10^6copy/mlのウイルス血症が最長10週間持続した。凍結保存した血清では同様のキメラ率のマウスに接種した場合でも,感染性が失われることもあり,検体保存に注意を要した。組織学的検討ではヒトアルブミン陽性細胞(ヒト肝細胞)はコア抗原、NS5A陽性(HCV感染細胞)であり、置換されたヒト肝細胞に特異的にHCVが感染し、複製していることが確認された。HCVに対する抗ウイルス効果をみるために,HCVの感染が成立したキメラマウスにIFNαの筋肉内投与を行ったところ,投与2-4週間で3-5LogのHCVウイルス量の低下を認め,投与中止によりHCVウイルス量は前値まで回復した.本キメラマウスはscidマウスであることより,今回のIFN投与によるウイルス量の低下は,免疫機構を介したウイルスの排除ではなく,IFNが直接肝細胞に作用して抗ウイルス作用を持つ物質を誘導していることが示唆された.
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