研究概要 |
本研究では,HERGカリウムチャネルを哺乳類の培養細胞に発現。パッチクランプ法を用いて解析を行った。現在までに得られた新知見は以下のとおりである。 1)細胞外K^+濃度([K^+]o)を低下させることにより,一定頻度で刺激を開始すると徐々に電流が増加し定常状態に達する現象が観察された。すなわち,初期電流量(I_<1st>)と定常電流量(I_<ss>)が低K^+条件では異なることが明らかとなった。この現象は[K^+]o=2mM以下で出現し,2mM<[K^+]o【less than or equal】5.4mMでは認められなかった。 2)[K^+]o=0mMとし,[Na^+]oを低下させるとI_<1st>とI_<ss>の差は著明に増大した。電流増加比(I_<ss>/I_<1st>)は今回の条件下では[Na^+]o=20mMの時最大となり,3.09±0.31倍であった。 3)Na^+イオンをLi^+イオンに置換,あるいは[K^+]o=1[Na^+]o=0mMとした溶液中では,上記の現象は認められず,I_<1st>とI_<ss>はほとんど同じであった。 4)上記の過渡現象が定常状態に至るまでの時定数は,0mM[K^+]o/低[Na^+]o溶液中では30〜60秒程度であり,0.5mM[K^+]oでは180±17秒と延長していた。 5)低K^+低Na^+条件下では刺激頻度により定常電流量に大きな違いが認められた。0mM[K^+]o/20mM[Na^+]o溶液中では,0.008Hz刺激時定常電流(I_<ss(0.008Hz)>)は,0.1Hz刺激時定常電流(I_<ss(0.1Hz)>)の32.4±3.8%であった。この定常電流は刺激頻度を変えると可逆的に変化した。 上記実験結果より,細胞外Na^+イオンがHERGチャネルouter poreと相互作用を有し,その影響は[K^+]o【less than or equal】2mM以下にて顕著になることが明らかとなった。Na^+イオンの作用は可逆的で,脱分極刺激によりouter poreと結合・解離を繰り返していると考えられた。
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