心筋に強く発現するタンパクの血中への漏出ないし分泌を指標として心不全、心筋障害の程度を評価するシステムの開発を目的として、以下の研究を行った。まず、高血圧性心筋症動物モデル(Dahlラット)および心肥大動物モデル(M21-トランスジェニックマウス)の心筋において、心肥大ないし心不全時に大きく発現変化する遺伝子群をDNAチップ解析によって同定した。それらのうち、D-10と名づけた新規遺伝子についてヒト遺伝子構造を解明し、またリコンビナントタンパクに対する単クローン抗体を作製し、これを用いてD-10産物が心筋内でZ帯に一致して局在することを明らかにした。また、高血圧性心不全と関連するD-10遺伝子のミスセンス変異を見出し、この変異によってZ帯タンパクとの結合性が低下することを明らかにした。一方、MLPに対する単クローン抗体2種を用いて、サンドイッチ法による血中MLP測定法を開発中である。予備的な段階であるが、心筋障害があると血中MLPタンパク量が増加することを見出している。一方、心筋と骨格筋のサブトラクションによって単離した新規遺伝子であるH452について、ヒトでは少なくとも4種のスプライシングバリアントが発現することを明らかにした。また、それらの各々についてリコンビナント蛋白をドロソフィラ細胞に発現させて精製し、これを用いて各々のバリアントに対するポリクローナル抗体を作製した。今後、これらの抗体を用いてヒト組織におけるH452分布と心筋障害時の血中量を検討する。
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