研究課題
DSSラットで心肥大期から心不全期にかけて大きく発現変化する遺伝子を287種同定した。それらのうち、MLPおよびBMP10について単クローン抗体を作製したため、これらを用いて心筋における発現分布を検討した。MLPはZ-I境界領域に分布し、心筋梗塞患者、心不全患者では血中MLP濃度が健常者と比較して有意に高値であることを確認したことから、これが心筋障害の血中マーカーとなると考えられた。一方、単クローン抗体を用いてBMP10は心筋細胞膜のみならずZ帯にも分布することを発見した。また、GFP-BMP10融合遺伝子をラット心筋初代培養細胞にトランスフェクトし、BMP10がZ帯に発現することを確認した。さらに、BMP10はZ帯でTcapと結合すること、ラット心筋細胞の肥大とサルコメア整合性の促進をもたらすことを見出し、これが心肥大のマーカーとなりうることを明らかにした。一方、心筋と骨格筋のサブトラクションライブラリーの解析から単離した遺伝子のうち、心筋に強く、骨格筋に弱く発現するH452遺伝子の解析を行った。まず、GFP-H452融合遺伝子をトランスフェクトしたラット心筋細胞で、H452がZ帯と介在板に発現することを明らかにした。この発現パターンはデスミンと類似しているため心筋症や筋ジストロフィー患者における変異を検索したところ、1名の肢帯型筋ジストロフィー患者に変異を見出した。ついで、H452に対する抗体を作製し、これを用いた検討を行ったところ、H452がZ帯および介在板に発現することが確認された。また、H452遺伝子変異を有する肢帯型筋ジストロフィー患者骨格筋試料を染色したところ、細胞内封入体を伴う特異的な所見を示したことから、この抗体が筋疾患診断に使用できると考えられた。これとは別に、機能連関を指標とした心筋症原因遺伝子解析を実施し、新規原因遺伝子CRYABを特定した。
すべて 2006
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