研究概要 |
冠動脈攣縮に対する効果的かつ副作用のない治療法開発をめざして、本研究では平滑筋収縮反応の最下流である収縮タンパク質(ミオシン・アクチン)相互作用を直接的・特異的に抑制する心筋トロポニンI抑制領域(領域136-147)由来ペプチド(TnIp)の血管平滑筋導入のための基礎的実験を行ってきた。平成15年度の研究実績は以下2項目である。 1)TnIpとそのアナログの生理活性比較:モデル平滑筋標本の収縮・弛緩サイクルへのTnIpおよびそのアナログの影響について生理学的・生化学的・構造生物学的解析を行い、ペプチド構造・生理活性相関を明らかにした。結果は2004年2月に行われたBiophysical Society 48^<th> Annual Meeting(米国メリーランド州ボルチモア市)で発表した(Watanabe et al.,2004)。現在、最も特異的かつ効率よく平滑筋の収縮抑制・弛緩抑制を行うペプチド構造のデザインを行っている。 2)適切な血管攣縮モデル標本の作成:TnIpやそのアナログの異常血管平滑筋収縮に対する影響を検討するためには、適切な攣縮モデル平滑筋標本を作る必要がある。そこで、血管攣縮の原因の一つと考えられる過酸化水素が平滑筋収縮タンパク質相互作用に与える影響ついて検討を行い、1mM以上の過酸化水素がモデル平滑筋のCa^<2+>活性化収縮を不可逆的に増強すること、このような高濃度過酸化水素処理標本が攣縮モデルとして適切であることを見出した。この結果はJapanese Journal of Physiologyに発表した(Sakurai et al.,2003)。現在、過酸化水素処理標季の力学特性に対するTnIpの効果について検討を行っている。
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