昨年度は肺非小細胞癌におけるGnT-Vの発現を手術摘出腫瘍を材料として、特異抗体を用いた免疫組織化学法で解析し、その臨床的・生物学的意義を統計学的に検討したが、今年度はGnT-Vの酵素反応産物であるβ1-6鎖の発現をL-PHAレクチン染色で解析し、β1-6鎖の発現を確認した。 つづいて、多段階発癌におけるGnT-V発現の意義を明らかにする研究を進めている。肺癌の前癌病変組織は入手できなかったため、肺非小細胞癌の組織型には扁平上皮癌があることに着目して、おもに扁平上皮癌からなる食道癌について、多段階発癌におけるGnT-V発現の意義を検討した。正常上皮、過形成、異形成、上皮内癌、浸潤癌を手術摘出腫瘍として入手し、特異抗体を用いた免疫組織化学法によるGnT-V発現の解析、L-PHAレクチン染色によるβ1-6鎖発現の解析をすすめている。これまでに、正常上皮19検体、過形成43検体、軽度異形成56検体、中等度異形成43検体、上皮内癌48検体、浸潤癌110検体を集めている。GnT-Vの発現は、正常上皮19検体中0検体(0%)、過形成43検体中1検体(2%)、軽度異形成56検体中30検体(54%)、中等度異形成43検体中27検体(63%)、上皮内癌48検体中21検体(44%)、浸潤癌110検体中29検体(26%)に認め、軽度異形成および中等度異形成において、正常上皮および過形成に比して有意に高頻度に発現を認めた。また、上皮内癌および浸潤癌に比しても有意に高頻度に発現を認めた。GnT-Vは、軽度異形成および中等度異形成という多段階発癌過程の初期の段階で高頻度に発現を認めることから、この段階に関与することが示唆された。
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