研究概要 |
神経難病患者は呼吸調節障害や呼吸筋障害を有するため,死因の第一位は呼吸器合併症であり突然死を経験する例も少なくない.しかしその病態や対策に関する研究はほとんど無いので,本研究では患者生命予後改善を目指して呼吸機能と呼吸器合併症の頻度を解析するとともに,呼吸リハビリテーションの導入により生命予後の改善を目指している.神経疾患患者(パーキンソン病,脊髄小脳変性症,多系統萎縮症など)を対象にデータを蓄積しているが,携帯型ポリグラフ装置を用いて呼吸機能の日内変化,とくに夜間の睡眠時無呼吸,気道閉塞,呼吸音等の解析も行っている(現在まで120例を解析ずみ).その結果,疾患特有の化学的呼吸調節異常が存在すること,パーキンソン病や多系統萎縮症患者では睡眠時の呼吸低下時(睡眠時無呼吸)に呼吸中枢賦活作用が著名に減弱していることが明らかになった.すなわち睡眠中の呼吸異常が夜間突然死の原因となりうることが示され,在宅患者における呼吸動態のモニターが必要であることが明らかになった.来年度は解析症例をフォローアップすることにより呼吸器合併症の発生頻度と予後について検討する.これにより各神経難病患者が将来呼吸不全に陥る危険がどの程度あるかを予測するために有用なパラメタを明らかにしたい.さらに,神経疾患患者用の呼吸訓練メニューに基づいた呼吸リハビリテーションを実施する.これにより神経難病患者の呼吸器合併症の予防と生命予後改善をめざす. なお,当初採用を予定していた指輪型ワイヤレス超小型呼吸モニタ装置は測定精度の問題のために発売中止となったため,現有の手帳サイズの装置を改良して測定に供している.測定値の再現性のため来年度も引き続きこの装置を使用してデータを蓄積していく.
|