研究課題
1.Transcriptional targeting法を応用した組み換えアデノウイルスベクター系の作製細胞種特異的プロモーターの活性は一般に弱く、目的の遺伝子を充分量発現させることは不可能である。そのため、本研究では、2種のアデノウイルスを組み合わせて用いる。細胞種特異的プロモーター下にCre Recombinaseを発現するものと、強力なプロモーターであるCAG下に目的の遺伝子cDNAを、発現を抑える無関係な配列を挟んで配置するものである。発現させたい細胞のみにおいてこの無関係な配列をCre Recombinaseで取り除くことにより、この細胞で特異的に発現させることができる。2.栄養源(nutrient)に対するミトコンドリア代謝活性化のエンジニアリング栄養源刺激によるインスリン分泌では、ミトコンドリア代謝の活性化が重要であるが、ほぼすべての細胞で代謝される栄養源(例:グルコース)では、特定の細胞種のみの応答を解析することは不可能である。一方、グリセロールはグリセロールキナーゼが欠如する膵ラ氏島内分泌細胞ではミトコンドリアを活性化することができない。同様にトリカルボン酸回路の中間体は細胞膜輸送担体(ジカルボン酸トランスポーター)が欠如するため、細胞内にとりこまれずミトコンドリア代謝を活性化できない。そこでグリセロールキナーゼあるいはジカルボン酸トランスポーターを解析対象の細胞種に発現させ、ミトコンドリア代謝を特異的に活性化させて、その直接効果を検討した。3.結果と結論:膵ラ島グルコース刺激時のグルカゴン分泌抑制は、β細胞からのパラクライン機構によるジカルボン酸トランスポーターをラ島の非β細胞にのみ発現させると、トリカルボン酸回路の中間体によるグルカゴン分泌は約2倍に増加した。しかし、ジカルボン酸トランスポーターをラ島全体に発現させると、トリカルボン酸回路の中間体によるグルカゴン分泌は増加しなかった。同様の現象は、グリセロールキナーゼの細胞特異的な発現でも認められた。これらより、膵ラ島グルコース刺激時のグルカゴン分泌抑制は、β細胞からのインスリン分泌がパラクライン機構でα細胞を抑制するためと考えられた。
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Diabetes 54
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